起業支援センター

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起業に役立つコラム

ここでは本には書いていない実務で必要な定款作成時のポイントをいくつかお伝えしておきます。

「事業目的」を考えてみる!

実際にやるかどうかわからないけど、とりあえず全部書いておいてもいいのか?

会社が営む事業の内容の事を「事業目的(会社の目的)」と言います。そして、会社は定款に記載された事業目的の範囲内でしか事業が行えないと言う制約があります。つまり、事業内容には将来予定している業務まで盛り込むことができます。 つまり、記述する列挙数に制限がある訳ではありません。ただ、「やるかどうかわからないけど全部書いておこう!」という発想はいかがなものかと思います。
あなたの会社の事業目的を見た時に、「いったいこの会社はなんの会社なの?」と思われてしまっては、その会社の存在意義がありません。単なる「何でも屋」では事業の継続すら難しいでしょう。事業の主軸と事業の展開予測を含めても、一般的には多くても10個前後ぐらいが妥当かと言えるのではないでしょうか。

事業目的の具体性はどこまで求められるのか?

事業目的の書き方ですが、旧商法では事業の目的としては、その目的に適法性・営利性・明確性・具体性が求められましたが、新会社法が施行されてからは、特に具体性については審査されないことになりました。
これは、事業の目的を柔軟に諮ろうという現代社会の流れを汲んだ結果といえます。
ところが、具体性がいらないというばかりに、「物品の販売」とい事業目的を書くことが、本当に事業目的としてふさわしいかどうかはいささか疑問です。前述の事業目的の列挙数と同様に、これでは、「何でも屋」と何ら変わりがありません。自分の事業が、ある程度明確になっているのであれば、ある程度の具体性をもたせた方が、外部的なアピールと言う意味ではいいのではないかと思います。

流行語や業界用語には注意!

事業目的では、先進の流行語や業界用語には注意が必要です。たとえば、「SEOに関するコンサルティング業務」は、いかがでしょうか?SEOという言葉は、業界では汎用的ですが、一般的にはまだまだ知らない人も大勢います。そんな時は、「SEO(Search Engine Optimaization)に関するコンサルティング業務」というように補足説明を入れるのです。つまり、誰もが理解できる言葉に置き換えるなり補足説明を付加するなどが要求されます。このあたりは、実際に登記申請をする所轄の法務局で事前に確認をとる必要があります。

許認可で指定された表現に注意!

宅建業、労働者派遣事業や介護事業のような許認可が必要な事業の場合は、事業目的に適切な表現が記述されていない場合は、行政官庁からその許認可を受けることができません。特に介護事業に関しては、都道府県ごとに介護事業の内容に応じて 事業目的に入れる表現が厳格に定められている場合があります。東京都で指定されていた表現が、神奈川では違う表現が指定されていた等のことで、後で定款変更が発生しないように細心の注意が必要になります。

「及び」と「並びに」を使い分ける!

意外に我々専門家が気を遣うのが、「及び」と「並びに」の使い分けです。法律家は「及び」と「並びに」を厳格に使い分けています。「及び」「並びに」は、どちらも並列的接続詞として使われます。

まず、結合される語が同じ種類であったり、同じレベルのものである場合は「及び」を使い、A 及び Bとなります。たとえば、「リンゴ及びミカン」です。

同じ種類の語を2以上並べるときは、「、」で並べて、最後に「及び」をもってきて、A、B及びCとなります。たとえば、「リンゴ、ミカン、及びバナナ」です。

つぎに、結合される語の種類(たとえば果物と野菜など)が違っていたり、別のレベルのものの場合は、「並びに」を使います。A及びB、並びにCとなります。たとえば、「リンゴ及びミカン、並びにキュウリ」となります。

こんな笑い話があります。大勢の法律家が列席したとある結構披露宴でのこと・・・。 ある人が「新郎並びに新婦は…」と祝辞をやりだしたところ、「新郎並びに新婦ではない! 新郎及び新婦だ!」という野次が飛び交ったとか。こんな披露宴には出たくないですけど・・・。

定款と登記での本店の所在地表記

会社の本店の所在地とは、会社の住所であり、定款の絶対的記載事項とされています。 定款の記載事項としての本店の所在地は、独立の最小行政区画の記載をもって表示すればよいことになっており、独立の最小行政区画とは、市町村をいいます。東京の場合は、特別区(例えば、東京都港区)となり、政令指定都市の場合は、市(例えば、神奈川県横浜市)となります。
そのため、本店の所在地を定款で定める場合には、次の2通りの方法があることになります。

(1)「当会社は、本店を東京都練馬区に置く」というように、最小行政区画である市町村(東京23区
  内では区)までを記載する方法
(2)「当会社は本店を東京練馬区一丁目1番1号に置く」というように、具体的な本店所在地まで記
  載する方法

定款上に記載する本店の所在地は、上記いずれの方法でもかまいません。
しかし、(1)のように定款で定めたときは、後に本店を同一区内で移転するのであれば、定款を変更する必要はありません。
しかし、(2)のように定めると、本店移転の都度、定款の変更が必要になります。つまり、株主の数が多い会社などで、定款の変更手続きに必要な株主総会の開催が大変な場合には、定款には(1)のような記載をするのがよいと言えます。
なお、登記を申請する書類には、定款の記載事項とは異なり、具体的な所在場所まで記載しなければなりません。つまり、登記における本店の所在地は、具体的に記載しなくてはいけないということです。(登記では、「本店:東京練馬区一丁目1番1号」となります)つまり、本店を同一区内で移転しても登記変更は常に必要になるのです。

株主総会決議の定足数を考える

役員の選任・解任や役員の報酬、あるいは定款の変更など一連の決定事項に関しては、株主総会の決議が必要になります。
たとえば、役員の選任・解任や役員の報酬は株主総会の普通決議で決定することになります。株主総会の普通決議における定足数(出席者数)は、原則として任意に定めることができますが、議決権を行使することができる株主の議決権の3分1を下回ることはできません。一般的には、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数の出席者数にするケースが多いようですが、株主が複数人いる場合には、出来るだけ代表取締役自らの意思でスムーズな開催ができるように、定款上では3分の1まで定足数を下げるように定めます。もちろん、決議に必要な議決権の必要得票数は、出席株主の議決権の過半数であることをかえることはできません。
また、定款の変更などの決定事項に関しては、株主総会の特別決議で決定しなければいけません。この場合は、定足数は普通決議の場合と同じように、株主が複数人いる場合には、出来るだけ代表取締役自らの意思でスムーズな開催ができるように定款上では3分の1まで定足数を下げるように定めます。
そして、決議に必要な議決権の必要得票数は、出席株主の議決権の3分の2以上になります。
つまり自分1人で会社を作る場合と共同経営者と会社を作る場合の自分の議決権数に応じて、ケーズバイケースで定足数を3分の1まで下げるかどうかの検討をすることになるのです。

現物出資の方法とその必要性は?

旧商法の時代には、有限会社は資本金が300万円、株式会社は資本金が1000万円という要件がありました。 つまり、旧商法では、会社の設立要件の1つである資本金要件を一定金額以上の現金で準備することができない起業家にとっては、現物出資をして資本金制限の要件を満たす必要があったために頻繁に現物出資という手段が採用されました。現在の会社法では、有限会社という法人形態も株式会社に統一され、併せて資本金の制限も撤廃されました。
つまり、無理に現物出資をして資本金要件を満たす必要もなくなった今では、ほとんど現物出資という方法をとる起業家も激減したのです。もちろん、現在使用している自動車やパソコン、大型プリンタやゴルフ会員権などを会社名義に切り替える方は大勢います。
ただそれは、個人所有物を会社の名義に切り替えることが目的であり、創業時の資本金に組み入れる現物出資とは直接関係のないことです。
よく誤解されている方がいますが、資本金はあくまで、会社運営の元手となる資金です。会社の名義にすることで法人税の法人経費にしたいという本来の目的とは直接関係のある話ではないので、無理に現物出資をする必要もないのです。
もちろん、「登記簿上の見掛けの資本金を増やしたい」というニーズには、現物出資という手段で実現できる1つの方法であることには間違いはありません。なお、現物出資をする場合には、従来ですと、裁判所に選任された調査役の調査や弁護士・会計士などの価格証明など煩雑な手続と費用が必要でしたが、 現在の会社法の下では「現物出資の金額が500万円以下」の場合には これらが不要になりました。なお、現物出資をする際には、その内容を定款及び発起人決定書(複数の場合は発起人会議事録)に記載しておかなければなりません。
ここでは、その定款記載サンプルをご紹介しますと、

(現物出資)
第 〇〇 条 当会社の設立に際して現物出資をする者の氏名、出資の目的である財産、その価額並びにこれに対して与える株式の数は、次のとおりである。

(1)出資者  発起人 伊関 淳
   住所  東京都〇〇区××一丁目2番1-101号
(2)出資財産及びその価額
  車両 (株式会社□□製 ××平成20年式 黒
  車両番号 練馬 い ×2-3〇)1台
  金60万円
(3)与える株式の数60株

のように記述し、現物出資をする際に追加で必要になる書類として、現金のみの場合に加えて、調査報告書、財産引継書、資本金の額の計上に関する証明書を追加で準備することで、現物出資を資本金として登記することができます。